第57話「石崖模様、イシガケチョウ」

皆さんこんにちは!ヨッしぃです!
今回はイシガケチョウをご紹介します。

〈1日目〉2021.6.18

近所の山際にある100メートルほどの遊歩道。駅からの帰り道にはほんの少し遠回りになりますが、今までにここで色々な生き物に会えたのでその日もここを通りました(第29話「手すりの虫」第41話「春の手すりの虫」)。

手すりの柵があり、歩道と山を隔てているんですが、なぜかよくこの手すりの上に生き物が出現します。
その日も手すりをチェックしつつ、その向こうの山に生えている木々も見ながら歩いていました。
で、とある木の葉っぱを流し見したあと、

ん?!

一旦次の木へと移っていた視線をもとに戻しました。

よく見ると葉っぱの上に何かが乗っています。

ん?ん〜!?

なんだか違和感のある、
最初お菓子の袋かプラスチックの破片、かと思うほど人工的なカラーに見えたその物体、近づいてよーく見ると。。。。

この幼虫はいったい。。。。?

なにかの幼虫だ!!(あたりまえ?)

でも今まで見たことがない!

毛が無いのでチョウか?!それともガか?
それともそれ以外の幼虫?

図鑑を持っていなかったので使いました、スマホのグーグルレンズ機能。これで写真を撮ると、似たような画像が自動的に検索される、というやつです。

この機能はとても便利なのですが、映り方によっては全く別の画像がヒットしたりと、昆虫検索では結構ダメなこともあります。

しかし、今回の幼虫はあまりにも特徴的だったのか一発で検索結果が。

『イシガケチョウの幼虫』

ほほうー!
これが、イシガケチョウでしたか!

実際、僕は成虫も幼虫も見たことがありませんでしたが、たしか、名の通り成虫の羽が石崖のような模様のチョウ。本来南方系のイシガケチョウの生息域が徐々に北上してきているという話は聞いたことがあります。

こちらは兵庫県神戸市の南側で、周辺の緑地や里山では成虫が確認されていたので、まあ、ここにいても不思議ではないんですが、このあたりで見たことがありませんでした。

もう少し観察をしたかったので、葉っぱごと失敬しようと枝を切っていたその時、すぐそばにももう1匹発見。

ここにもいました。

指との大きさ比べです。

そして2匹をていねいに持ち帰らせていただきました。

イシガケチョウの幼虫の1番の好物は「イヌビワ」という植物です。ほかに、イチジク、オオイタビといった植物の葉を食べます。

イヌビワです。周囲にはこの木しかありませんでした。

今回幼虫がいた葉がズバリ、イヌビワなんですが、ここにはその小さな木1本だけで、周りを見渡しても他に同じ木がありません。

ピンポイントでここだけに?産卵したんでしょうか。

〈2日目〉2021.6.19

昨日幼虫と一緒に持ち帰ったイヌビワの枝は一輪挿しにしましたが、まずまず葉っぱは元気です。木の種類によっては挿し木にして1日と持たずに枯れてしまうのがあるのを考えると、上出来でしょう。そして何より、ムシャムシャと2匹とも元気に葉を食べており、たくさんのフンも。
これなら飼育できそうだ!

葉の裏側からひょっこり顔を出していました。ピエロのような顔つきですね。

〈3日目〉2021.6.20

なんだか幼虫の様子がおかしい。

昨日まで食べていた葉を全く食べなくなりちょっと変な形でぶら下がっています。

2匹とも。

これはもしや。。。。

前後に縮むような形でぶら下がっていました。

〈4日目〉2021.6.21

やっぱり、思ったとおりでした。サナギになっていました。それにしても、あの奇抜な(?)デザインの幼虫がどうやったらこんなサナギの形になるんでしょうか。また、2匹とも同時ってのがすごい。不思議ですね~

ということは、捕まえてきた時点で終齢幼虫だったということですね。

ん、さらに、ということは、あの捕まえた木に何日も前からいたってことですよね。何回も前を通ってたのに全く気づきませんでした。
これからはもっといろいろ注意深く観察しながら歩かねば。。。。

〈7日目〉2021.6.24

サナギの色がだんだんと茶色っぽくなってきました。そしてよく見ると、サナギの表面に葉の葉脈のような模様も。

これも擬態でしょうか。動けない、逃げられないサナギの間は昆虫たちにとってとても危険です。サナギになってから擬態するという技を持っているのかもしれません。

ただ、なんか、枯れ葉のようだし、干からびてきてるようにも見えるし、小さくなってきてるようにも見える。

これ、ほんとに羽化するのかなー。

〈10日目〉20216.27.朝

朝、子供が僕を起こす。

チョウになってる!」と。

急いで見に行くと、チョウが!

ほんとにチョウになってる!しかも、図鑑でしか見たことのないイシガケチョウがすぐ目の前に!

なんだか作り物のチョウみたいに見えますね。

無事に2匹とも羽化していました。

なぜか下を向いて止まっていました。

手と大きさ比べです。

部屋の壁に止まりました。

サナギになる時も、羽化する時も2匹同時なんですね!すごいなぁ。

このチョウの1番の特徴でもあるこの羽の模様。名前の通り、石崖です!

他にこんなチョウいませんよね。一度見たら一生忘れられないかもしれません。

まだ羽化したてであまり飛ばないのか、大人しかったので、ちょっと手に乗せてみたり。
なんか、作り物のチョウか、合成写真みたいにも見えますよね。しかしこれはすごい!

もう一つ特徴的なのは止まり方、方向です。水槽に止まっている2匹はどちらも下を向いていました。これもまた不思議です。

〈10日目夕方〉20210.6.27夕方

近所の生き物好きな子供達とその親を集め、みんなで少しばかり観察。子供も大人も、この不思議なチョウには興味津々。一通りイシガケチョウについての説明をし、その後は空に放しました。幼虫を見つけたすぐ近くです。

覗き込む子供たち(と、大人)


元気に2匹とも飛んでいきました。

飛んでいく姿は、あれだけ特徴のある色形をしているにもかかわらず、単に「白っぽいチョウ」に見えました。しかも結構飛ぶスピードが速い。
これではたぶん、イシガケチョウだとは気づかないでしょうね。
もしかすると、これまでにも近くで、飛んでいるイシガケチョウに出会っていたかもしれません。近くで目撃したことがない、と思っていたのは、ただ見分けられていなかった、だけかも知れません。

とにかく、短い間でしたが、イシガケチョウ三昧の日々でした。知識も一気に増えました。

やはり、身近な生き物との出会いはいいですね!
その出会いが人生をも変える?!ことになるかもしれません。

これからみなさんにも良き出会いがありますように!願っております。

また、あの木に戻って来てくれればいいなぁ。

イシガケチョウのまとめ

○大きさ:(前翅長)26-36mm

○成虫出現時期:5-10月頃

○分布:本州(紀伊半島以西)・四国・九州・沖縄

○生息地:渓流域、林縁、産地、疎林などで、平野部には少ない

○食性:幼虫はイヌビワ、イチジク、オオイタビの葉。成虫は花の蜜。

○成虫越冬し、翌年繁殖活動する。ヒラヒラと高速で飛ぶ。止まるときは羽を開く。頭を逆さまにして止まることも多い。

では、みなさん、またお会いしましょう!

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